私たちは「認知症高齢者の排便ケア」をテーマに取り組んでいます。
人は本来、おいしく食べてスッキリ出すことを365日毎日行っており、生きる上でとても大切なことです。
しかし、高齢者は、心身の機能低下により、食べて排泄するというサイクルが崩れ、便秘に傾く傾向にあります。
皆さんは便秘の定義ってご存知ですか?
その人の排便のサイクルによって違いますが、一般的には排便が3日に1回程度しか出ない、便が硬い、便の量が少ないということを総合して「便秘」と言います。
*私たちは、施設で生活している認知症のある高齢者の排便状況について調査しました。
☞便をしたいという感覚が「あいまい」「わからない」人が多く、自分でトイレに行けない人、どんな便が出たのか、今日便が出たのか、昨日出たのかを認知症のために覚えていられない人がいました。
認知症高齢者の排便状況は把握しにくく、排便のコントロールが難しいことから、「便を出す」ためのケアが大事ということがわかりました。
*次に、施設のスタッフはどのような排便ケアを行っているのかを調査しました。
☞水分・食事の援助は、ケアの実施率が高く、約9割が実践していました。
しかし、腸(ちょう)蠕動(ぜんどう)を促す援助や便意を促す援助は、重要とわかってはいるがケア実施率が低かったのです。
「これは、なぜだろう?」そう思って施設のスタッフに聞いてみました。すると、「自分のやっている方法でいいのか?」「ケアに自信がない」ということでした。
*そこで、スタッフと一緒に排便ケア方法について勉強し、排便ケアについてカンファレンスを行うことにしました。1~4週間の間隔で施設に出向き、スタッフの相談にのりながらケアプランを立案、ケア実施、ケア評価、プラン修正をし、認知症高齢者の排便ケアを行っていきました。
☞すると、施設で生活している認知症高齢者の排便の状況に変化がありました。腹圧をうまくかけて排便することができなかったのですが、スタッフが「笑うと腹圧がかかる」ことにヒントを得て【トイレで高齢者を笑わせる⇒腹圧がかかる⇒便が出る】のサイクルを日々繰り返し、トイレで排便をすることができるようになりました。
また、もう一つうれしい成果です。
☞この介入を2年つづけ、終了後に「排便ケアを実践していますか?」と質問したところ「全くしていない」の項目がなくなっていました。
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図1 排便ケアの実践状況
認知症高齢者の排便コントロールは施設のスタッフにとって難しいことは確かです。しかし、便が出ない不快感は、認知症高齢者にとっては心身ともに落ち着かない状況につながります。
そのため、私たちは、これからも施設のスタッフと一緒に排便ケアについて勉強会を行い、認知症高齢者の「快便」を目指し、穏やかな生活に向けた援助を行っていきたいと思っています。
みなさんは、「便秘」で悩んでいませんか? 便秘は予防することが大事です。
世間では、「腸活」が注目されています。腸内環境を整え便秘を防ぎ、快便を維持することで健康やダイエット・美肌、さらには免疫力アップの効果があるとされています。
皆さんも是非、「腸活」を行い、「快便」を目指してみませんか?
この研究は、平成23年度科研費基盤研究(C)課題番号23593490の助成を受けて実施したものです。研究成果は、認知症ケア事例ジャーナル(vol9.no4)、老年看護学会学術集会、認知症ケア学会学術集会、ADI国際アルツハイマー病協会国際会議において発表しました。
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