今回は、看護学科精神看護学領域での研究についてご紹介をしたいと思います。
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皆さんは、”倫理”と聞いてどのようなイメージを持ちますか。
なんだか堅苦しい、なんとなく分かるようで漠然としている・・そんなイメージがあるかもしれません。
色々な定義がありますが、「倫理」について日本看護協会では「私たちが社会の中で何らかの行為をするときに『これは善いことか、正しいことか』を判断する根拠」とされています。
精神科は法的に「隔離」や「拘束」が認められており、倫理的な課題に直面しやすいと言われています。
私たちは精神科において、看護学生が「倫理」についてどのような思考をするのかについて研究を行いました。
今回の研究結果で、実習の中で直面したできごとに違和感を感じているものの、その違和感が何なのか分からない、また、何が正しいことなのか葛藤し続けているという思考のパターンがあることが明らかになりました。
この場合、どのような行動をとるかについて、一人で考え続ける学生、周囲に話す学生と2つに分かれましたが、周囲に話した学生は、「やっぱり自分が感じていた違和感は他の人も感じていたんだ」と思ったそうです。
また、他の人が違和感を感じていた場面で、「自分は特に違和感を感じなかった」という場合もありました。
その背景には、「看護師や教員から言われたことが正しい」という判断の根拠になっていたことが伺えました。
学生は、「自分が患者様の立場だったらどうか」「患者様が望んでいることは何か」そんな視点で倫理的課題と向き合っていました。
精神科に限らず、医療の現場では倫理的課題に直面することが多くあります。
それが「正しいか」「間違っているか」それだけでは判断できないこともあります。
今回の研究では、
直面したできごとに対して、「これはどうなのか」「これは正しいことなのか」と気付くことのできる感性を育て「これはもしかしたら間違っているのではないか」と言える、話し合える雰囲気や環境をつくること、看護師として患者様のために何が最善かを考え続けることが倫理的課題を解決していくために必要なことではないかという結論に至りました。
倫理的感性が失われないよう、また育てていくことができるように、私たち教員も工夫と努力を重ねていこうと改めて思うことのできた研究でした。
※本研究は、2016年度看護科学学会にて発表致しました。