看護学科の研究File.5

 ♪看護学科の研究シリーズ5回目♪です。
今回は、教職課程をご担当されている新谷恭明先生の研究についてご紹介します!!

jera(画像はクリックすると拡大します)

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 私は看護学科の教員ですが、教職課程を担当しています。専門は看護学ではなく教育学です。教育学も看護学と同じように幅が広く色々な領域があります。私の専門分野は「教育史」という領域になります。そして、大学で講義を持っているのは「教育原理」、「教職概論」、「教育課程論」、「教育方法論」、「教育実習の事前事後指導」、「教職実践演習」など教職に就くための基本的な知識と考え方を身につけてもらう科目です。 教育史は教育学の中では教育哲学とともにその基礎的な部分を担っています。講義をしている教職、教職課程、教育方法等も基本的には哲学的、歴史学的に前提があり、その上に成り立っているので、目先の関心だけでなく、じっくりと教育をその基本から見直していく姿勢が将来、教職に就いたときにとても重要になってきます。 それはともかく、看護学科では養護教諭の育成を行っていますから、まずは学校衛生の歴史について調べています。

Photo1は学校衛生の先駆者である三島通良という人物が作成した『衛生唱歌』という冊子です。この年、『地理教育 鉄道唱歌』いわゆる鉄道唱歌が大阪の楽器店から出版されて大ヒットとなりました。あの♫汽笛一声新橋を♫という曲です。このヒットに便乗していろいろな「○○唱歌」がつくられましたが、その一つになります。教育勅語のことから歌い出し、「身体髪膚を父母に受け、毀傷せざるを孝と云い、心身みながら天皇に、捧げまつるを忠という」というように、天皇のために健康になるのだよ、とさとす歌でした。子どもの健康は国のため、天皇のためであったという時代をあらわしています。

Photo1
photo1(画像はクリックすると拡大します)


Photo2は学校衛生の雑誌です。左は「日本学校衛生」。大日本学校衛生協会という民間団体の発行したものです。この団体は大正元年に本図晴之助という人が設立した組織で、会長に北里柴三郎、副会長に衛生唱歌の三島通良を戴いていました。右は大正9年に文部省内に設立された帝国学校衛生会の機関誌「学校衛生」です。こうした雑誌を見ていると日本の学校衛生の草創期の問題意識や、志をうかがい知ることができて、わくわくしてきます。

ところで、平成30年度から道徳が「特別な教科 道徳」という教科になりました。それで、道徳教育の歴史も調べています。Photo3は明治16年というまだ道徳教育がどういうものか模索していた時代に文部省が作成した修身科(道徳の教科)の教科書です。内容は「大和小学」、「和語陰隲録」、「女大学」、「日新館童子訓」、「神皇正統記」といった江戸時代までに出回っていた文献からの抜き書きで成り立っています。まだ教育勅語が制定される前の教科書なので、親孝行のような徳目と天皇制を結びつける書き方にはなっていません。皇室崇拝も一つの徳目として扱われています。もちろん古い文献からの引用ですからそうならざるを得ません。

Photo2
photo2(画像はクリックすると拡大します)


Photo4は昭和12年という戦時体制に入って使われた修身科の国定教科書です。もちろん教育勅語の精神に則った内容になっていますし、戦争の臭いがプンプンします。そういう修身科でしたが、戦後、GHQによって停止されたまま、復活はしませんでしたが、修身科そのものが否定されたわけではありませんでした。文部省の中で公民科教育刷新委員会というのがつくられて、答申を出します。そこでは修身科は個人的な道徳ではなくて、社会道徳の面も含めて「公民科」として再出発すべきだということが提案され、翌昭和21年夏にまとめられたのが、Photo5の右端の文書『国民学校公民教師用書』です。戦後教育改革の議論が行われている最中でしたが、文部省はまだどうなるかもわからない公民科の教師用書をつくって道徳教育の復活を考えていたのです。この公民科案は新たに開設された社会科の中に吸収さされていきます。左の2冊は福岡第一師範学校男子部附属国民学校と同女子部附属国民学校で昭和21年12月と昭和22年1月にそれぞれ開催された教育研究発表会の要録です。修身科を引き継ごうとしていた公民科や社会科の先生たちの取り組みが研究授業という形で議論されていました。4月からは新しい六三三制の学校教育が始まる前夜の一幕です。

Photo3】                 【Photo4
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Photo5
photo5(画像はクリックすると拡大します)

こうやって見ていくと新しく始まる教科としての道徳をどういう方向で実施していったらいいのか、そこに課題はないのか、という現代的課題を考える素材は歴史の中にいっぱい埋もれています。

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 先生は、このような研究成果を踏まえた道徳教育のブックレットを今年書かれたそうです。
 そして、11月17~18日に南九州大学(宮崎県)で開催される九州教育学会では「特別の教科 道徳」を考えるシンポジウムで、これからの道徳教育について提案者の一人としてご発言されます。

詳細は下記の案内をクリックして確認できます↓↓
 当日参加可能、参加費は500円となっております。
 ご興味のある方は、ぜひご参加くださいませ♫

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