「看護のための臨床検査」演習のひとコマを紹介します。

病院で、患者様はさまざまな検査を受けます。看護師は、患者様が安心してスムーズに検査を受けられるようにする役割があります。看護学科2年生の「看護のための臨床検査」では、安全、安楽、正確な検査を支援する演習を行います。

この講義では、検査方法、検査体験だけでなく、看護師として患者様をどのように援助するかを学び、考えることを目標にしています。

今回は先日行われた、①スパイロメトリー、②尿検査、③12誘導心電図という、3種類の演習の様子をご紹介します。

 

①スパイロメトリー
スパイロメトリーとは、肺活量や息を吸う力・吐く力などを調べて、呼吸状態に異常がないか調べる検査です。鼻から空気が漏れないようにクリップで鼻をつまんだ状態で、筒状のマウスピースを隙間ができないようにくわえて検査します。

一見簡単そうに見えますが、ゆっくりと呼吸したり、胸いっぱいに吸い込んでから勢いよく息を吐きだしたり、息を吐きだせる限界まで吐ききったりと、意外とコツが必要です。それに加えて、肺の病気やぜんそくなどを抱えている患者様であれば、呼吸状態に影響して咳や疲労、嘔吐を引き起こしてしまう可能性も考えなくてはなりません。
IMG-2503今回は、新型コロナウイルス感染症対策のため、実際の体験は自宅にマウスピースを持ち帰って「事後課題」としました。演習室では、検査機器を見たり、検査方法や検査結果の見方について解説を受けたりして、正確な検査結果を得るための学びを深めました。

事後課題では、体験を通して「普段何気なく行っている呼吸も、マウスピースを加えた状態で意識的に息を吸ったり吐いたりするのは難しい」、「隙間ができないようにくわえること自体が難しい」ということに気づき、患者様にどう説明するかに結び付けて考えることができたようです。

 

②尿検査
尿検査は、ウロペーパー®という尿試験検査薬を使って尿のpHや、尿中にブドウ糖や蛋白質、血液などが混じっていないかを調べます。演習ではA~Eの5種類の模擬尿を使って、尿を取り扱う際の注意点、検査結果から何が考えられるか検討しました。

IMG-2498この検査は、尿にウロペーパーを浸したあと、0秒(直後)、10秒後、30秒後、60秒後というタイミングで色調を見て、判定基準となる色と比較しながら判断していきます。

今回は、6種類の検査を同時にできるウロペーパー®を使ったため、10秒単位で1~2種類の色調の変化や程度を瞬時に判断する必要がありました。それは想像以上に難しかったようで、「どっちの色かな?」、「えっ!もう30秒⁉」、「次は何見るんだっけ?」とアタフタしながらも、タイマー係、記録係、判定係とメンバーで協力しながら繰り返しチャレンジしていました。

実は、この『模擬尿』、教員の手作りです。先生方は演習の前日、密かに、大変な思いをして作成しました。『模擬尿』の材料は・・・秘密です(^_-)-☆

 

③12誘導心電図
IMG-250212誘導心電図とは、胸部6ヶ所、両手首、両足首の計10ヶ所に電極を取り付けて、心臓に流れる電流を調べ、心臓の収縮や拡張に異常がないかを見る検査です。一般的な健康診断でも行われる検査で、不整脈や狭心症、心筋梗塞などの心疾患の診断や、電解質異常などが把握できます。

12誘導心電図で正しいデータを得るためには、正しい位置にしっかり電極を装着することが重要です。このモデル人形は、電極が「正しい位置にしっかり」装着できているかを判定することができる優れものなんです!

 

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演習では、モデル人形(シミュレーター)に心電図の電極を装着してみました。電極が正しく装着でき、心電図の波形が確認できるまで何度もトライしました。

順番を待つ間は、心電図の異常波形(危険な不整脈)についてみんなで学習しました。

 

 

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実際にやってみるまでは「電極を装着するのは簡単そう」と思っていたそうですが、吸盤を密着させるのは思った以上に難しいことや、両手首・両足首に装着する電極の向きも重要なことに気づきました。

また、胸を露出した状態で電極を付けなければならないため、患者様が恥ずかしくないように配慮し、身体が冷えないよう保温に努めなければならないことを学びました。

 

今回の演習では、苦戦しながらも、みんな真剣な眼差しでグループメンバーと協力しながら学んでいました。また、体験を通して検査を受ける患者様の不安や苦痛をイメージすることができ、看護師として何を観察しなくてはならないか、どのような配慮や援助が必要なのかについても考える機会となりました。

これからの講義でも、たくさんの検査に出会うと思いますが、患者様をできるだけ具体的にイメージし、看護の視点から手順や配慮を考える力を身につけて欲しいと願っています。

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